妹の死、兄の骸

妹を守るために奔走する兄

時は流れ、2人だけの生活は刻々と過ぎていく。最初は幸せだった、これからも2人で生きていけると信じて疑わなかったが、世間は2人を冷たく突き放していく。やがてまともに食べられるものも手に入れられくなるほど困窮していき、金目のものとなるものも底をついて行く中で、節子の体調に変化をきたす。その頃には節子の身体はやせ細り、誰もが目を背けたくなるほど苦しい状況で生きているのがよく分かる。それもそうだ、本来なら一時的に避難するための場所として作られた横穴では満足に人が住める環境は整えられておらず、日々の生活の糧となるお金を稼ぐ術を持たない清田と節子は行き詰っていた。

やがて妹の体調が良くないことを知る清田は、ついには盗みを働くようになる。例え警察に捕まって突き出されても、妹だけは守ると決意して盗み続けた。それは空襲警報が発令された状況下、民家に忍び込んでは食料を食い漁り、金品を盗んでいく日々を繰り返す。妹は自分が守る、それだけがこの時清田に残されていた生きるための原動力だったが、彼は気づいていなかった。すでに節子の身体は取り返しの付かない状況にまで衰弱していき、まともに話すことも出来ず、眼の焦点すら朧になってもはやいつ力尽きてもおかしくなかった。

これからは満足に食事を食べさせてあげられる、その期待に胸膨らんでいた清田を待ち受けていたのは節子の弱り切って倒れ伏せた姿だった。

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戦争終結、家族の喪失

急ぎ医者に見せるものの、極度の栄養失調にあると診断されるだけで何かしてもらえることはなかった。その後節子に何が食べたいのか尋ねると、力を振り絞って見せた笑顔で大好きなドロップをまた食べたいと告げる。その願いを叶えるため清田は自身の預金を全額引き下ろすことにするも、訪れた銀行で耳にした世間話は日本が戦争に負けたという事実だった。生きることに精一杯だった清田は戦争がどうなっているのか知らなかった、そこで父親が所属する連合艦隊がとうの昔に沈められていた事も知り、いつか帰ってくると信じて疑わなかった父がすでに死んでいることを知り絶望する。

それでも妹がまだ待っている、妹を助けることだけがこの時清田に残されていた唯一の目標であり、目的だった。しかし彼の願いは虚しく散る事になる、妹のために買ってきたスイカを一口食べた後節子はそのまま永眠する。最期まで節子は兄のためを思っていたが、清田にとっては妹を助けられなかった自分への責だけがある。

翌日、1人入山して妹の死体を火葬する、そこには生前妹の持っていた思い出の品を詰め込んでの悲しい最後を看取っていった。翌朝燃え朽ちた節子の骨をドロップ缶へと入れて清田が向かった先は横穴ではなく、冒頭部分の駅へと繋がりそこで妹と同じく餓死を迎える。

背景は赤黒い、幽霊となった清田と節子の姿が再び現れる。成仏することも出来ず、自分たちの死ぬまでの光景を永遠と見続けなくてはならない清田と節子の前に広がるは現代の発展したビル群がそこには広がっていた。長い時間を掛けて清田と節子はずっと同じことを繰り返していかなくてはならず、また見続けなくてはいかなくてはならないことを示唆しながら終劇する。

平和を願う、戦争反対!

何をしても許される時代ではない

終盤において清田はもう何をしても妹を助けるためにと暴走を繰り返していく、それがひいては妹を助ける事になると信じていた。空襲を契機として静まり返った屋内で金目の物を盗んで食料を奪う、そんな日々を過ごしていった。ある時は燃え盛る街の中を1人逃げ惑う人々とは逆走する姿、目的を果たした清田が蹂躙する敵国の爆撃機を応援する姿も描かれている。この時、清田自身がすでに正気を失っていたといえる状態だったのかもしれない。生きるためには何だってする、それが許される時代であったわけでもない。またこうした行動ばかりを繰り返していたがために、妹の状態にも気づけなかったようにみえる。

その後もう手の施しようがないところまで節子は衰弱してしまい、清田の努力も届かないまま短い人生に幕を下ろしてしまった。父を失い、母を亡くし、そして妹すら失った清田は生きることを放棄したといえるだろう。横穴に戻らず、自分も同じように死ぬことを選んだこと、そしてその後二度と抜けられない自分たちの最期を見続けなくてはならない業を背負い込んでしまった。いうなればこの物語は清田と節子が贖罪のために繰り返していた物語である、そう述べる人もいる。永遠と繰り返されていく時間の中で、自分の死を目撃し続けなくてはならない幼い兄妹が辿った末路は、そんな悲しい結末へと繋がってしまっている。これがひいては戦争における悲しさを訴えるのに十分な表現とされているのです。


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